安全と安心の医療を提供するためには、手術で使う器具やその他の医療製品を清潔な状態に保ち、感染病の予防をすることが要求されます。器具を水洗いするだけでは充分な効果は得られない為、滅菌をするのに専用の装置が必要です。一口に滅菌装置と言っても、用途やコスト等の違いから、様々な種類があります。ここでは、主に3種類の滅菌方法について簡易的ではありますが解説しています。ご参考にして頂けますと幸いです。
■滅菌の目的
「滅菌」とは、対象の”すべて”の細菌や微生物を除去(死滅)させる事です。同じ様なことばで「殺菌」がありますが、これは対象の一部分において細菌や微生物が除去されている状態のことをいいます。殺菌だけでは、すべての細菌や微生物を除去ができません。感染防止、清潔の有効性を確保するには滅菌が必要になります。滅菌は用途により高圧蒸気滅菌、EOG滅菌、低温プラズマ滅菌等の方法があります。
■高圧蒸気滅菌
高圧蒸気滅菌は比較的容易に行える方法です。オートクレーブという装置を使い、装置の庫内を115℃~135℃の高温と、飽和水蒸気(滅菌装置内の空気を高温の蒸気に置換)で満たすことにより、微生物やタンパク質を不活性化させ、かつ死滅させます。有毒性のある化学物質等は使用せず、水道水や精製水を使用する為、滅菌装置内や被滅菌物、また医療施設内に毒性のあるものが残留することはありません。
基本的にはピンセットやハサミ等の医療製品に広く適用されますが、液状のもの、吸水する性質のもの、熱により変形するものには適しません。
オートクレーブに適す製品は、金属製のピンセットやハサミ等の鋼製小物。耐熱性のあるガラス、ゴム、シリコン製品。耐湿性や防水性のあるガウンやオイフ等の布製品等が挙げられます。
■EOG滅菌(酸化エチレンサイドガス滅菌)
高温、高湿に耐えられない製品はオートクレーブによる滅菌は適しません。広く医療器具に適用される滅菌装置がEOG滅菌装置です。酸化エチレンサイドガスという微生物やタンパク質に作用するガスを使い、これらの増殖を抑制させ、かつ死滅させます。
37℃~60℃という比較的低温で滅菌ができ、被滅菌物を変形させたり機能を損なう恐れが低い為、ガスが浸透しにくい素材のものを除けば、広い範囲の医療製品に適用されます。
ただし、酸化エチレンガスは有毒性のある物質の為、エアレーション(ガス抜き)等を必ず行う必要がある為、滅菌工程は時間が掛かる傾向にあります。エアレーションをするには、装置から配管パイプを通して屋外へ排気する為、場合により建物の工事が必要になります。しかし、建物の構造上の問題で工事が不可であったり、地域や近隣の関係上、排気が認められない場合があります。EOG滅菌装置を導入する場合は、装置が問題なく設置できるか確認をする必要があります。EOGガスは目に見えず、臭いもしない物質ですが(人間では感知できない微量の臭いは発生しています)、有毒性物質の為、厳密に管理する必要があります。
■低温ガスプラズマ滅菌
装置内を高真空状態かつ過酸化水素ガスを使用することにより、微生物やタンパク質をプラズマ状態にします。この時、分子レベルでは電離をしておりとても不安定な状態になっています。過酸化水素はこの不安定な状態によく作用し、対象を不活性化させ、かつ死滅させます。過酸化水素は分解されると水や酸素になります。滅菌装置内から排出されても、ただの水もしくは酸素の為、人体に対しては無毒で、環境には無害でやさしい物質です。
また45℃~55℃程の低温で滅菌ができます。低温の為、熱による変形等、被滅菌物が損傷する可能性は低い為、広い範囲の医療製品に適用されます。また、エアレーションをする必要もない為、滅菌時間も短く済みます。
ただし、他の滅菌方法と比べてガスの浸透性が弱いということと、液状のものには向かないという性質があります。また高真空状態の為、空気を多く含んでいるものにも適しません。
高機能で環境にもやさしいですが、価格は高い傾向にあります。
■滅菌方法別のまとめ
| 滅菌方法 | 適用範囲 | 滅菌時間 | 環境配慮 | イニシャルコスト | ランニングコスト |
| 高圧蒸気滅菌 (オートクレーブ) | △ 高温、高湿に耐えられないものには適さない | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| EOG滅菌 | 〇 | △ (エアレーションが必要) | △ | △ 本体価格に加えて、建物の工事や周辺調査が必要な場合がある。 | △ 専用ガスカートリッジが必要。 |
| 低温プラズマガス滅菌 | 〇 | 〇 | 〇 | △ 電源があれば使用可能だが、本体が高価の場合が多い。 | 〇 |
■滅菌器取扱メーカー様
(50音順、敬称略)

